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吉本隆明『宮沢賢治の世界』 ほか

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    吉本隆明『宮沢賢治の世界』(筑摩書房 2012年)

    河合隼雄『猫だましい』(新潮社 2000年)

    高橋源一郎『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』(集英社 2005年)

     

     NHKEテレの『100分de名著』の3月分放送は「宮沢賢治」でした。

    宮沢賢治と云えば『春と修羅』等の詩人であり、『銀河鉄道の夜』等の童話の作家で、日本では子供から大人まで幅広く親しまれています。しかしながら、一方では宮沢賢治に関する批評・評論・解説本はいずれも難解でわかりにくいものが多いようです。詩も童話もメタファー(隠喩)であり、老若男女を問わず読者一人ひとりが、それぞれの置かれた状況で如何様にも解釈することができる魅力を備えていることが、親しまれるながらも難解なこととに通じているのかもしれません。

     ここに取り上げた本は、その中ではとても分かりやすく楽しく宮沢賢治の魅力が語られています。先ずは、河合隼雄著『猫だましい』からの引用です。

     山折哲雄さんが、小学校6年生に対して、宮沢賢治についての授業をした。山折さんは賢治の3つの作品『風の又三郎』、『注文の多い料理店』、『銀河鉄道の夜』を示し、「これらには、共通する問題が出てくるです。なんだと思う?」と子供たちに問いかける。そして、「それはね、風がものすごく大切な役割を果たしているということ。この3つの童話の中心的な大問題は風だということです」と自ら答え、賢治の作品のなかの風の重要性を明らかにしていく。実の賢治の本質をついた授業である。

     この授業を受けた子どものなかに、「それは猫だ」と言おうと思ったが山折先生が「風」と言ってしまったので。あれっと思った。そうかなと思ったが、先生の話を聞いているうちに、やっぱり「風」と思った、ということです。

     猫のイメージと風のイメージが、私(河合)の心の中で重なるのを感じたのである。

    普通だと、猫と風は全く別種と感じられるかも知れない。違うと言えばまったく違ったものである。しかし、風の掴まえどころのなさ、いったいどこから来てどこへ行くのかわからない、優しくもあれば荒々しくもある、少しの隙間からでも入り込んで来る、などという性質は、猫にもそのまま当てはまることだし、賢治の作品の猫たちは、まさにそのような性格を持って登場してくるように思うのである。

     

     次に、吉本隆明著『宮沢賢治の世界』の9章「いじめと宮沢賢治」からの引用です。

     宮沢賢治という人の童話は、ある意味ではほとんど全部がいじめ問題じゃないかということです。それで、いじめ問題ということで、ちょとと絡めて賢治の作品を読みました。すると、いくつかの思いがけないいじめ問題についての考えが宮沢賢治にあるわけです。他のいじめ問題の専門家のような人や、いまのいじめ問題でいろいろと言われている考え方とものすごく違っているところがひとつあります。それは何かと云えば、いじめる方については、あまり何かを云ってないんですが、いじめられる方の人間といいますか、子どもは、要するに、”聖”だと言っていると思います。”聖”というのはつまりセイントといいますか、つまり非常に尊い人だ、尊いものだ、ということを、賢治は言っているように思えます。

    いじめられるほうが偉いのだというと、ちょっと違いますが、人間として純粋とか、人間以上の何かを持っているんだと言っていると思います。つまり”聖”だと言っている。

     宮沢さんの童話を、何か特定の主題と結びつけて論ずるのは、本当は違うような気がしますけれども、しかし、宮沢さんの童話のなかには、今日の主題のように、いじめにもし普遍性があるとすれば、普遍的な意味でのいじめを主題にした文学だと思います。

     

     最後に、高橋源一郎著『ミヤザワケンジ・グレーテストヒット』について。

     この本は宮沢賢治の童話を題した24作品が収録されている短編集です。宮沢賢治のトリビュートであると言われていますが、私の読後感としては、その内容からは宮沢賢治に対するオマージュ(尊敬・賛辞)であるとは思えません。しかしながら、2006年に「第16回宮沢賢治賞」を受賞しているということは、それなりの評価を受けているということなのでしょう。

    shr-horiuchi * こんな本を読みました * 21:20 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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