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河合隼雄『昔話と日本人の心』・『猫だましい』

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    河合隼雄著『昔話と日本人の心』(岩波書店 1982年)

         『猫だましい』(新潮社 2000年)

     

     このブログで何回か前に河合隼雄の『影の現象学』と『昔話の深層』を取り上げました。この2冊はどちらかと云えば外国の小説や童話・昔話を、特に『昔話の深層』では副題に「ユング心理学とグリム童話」とあるように「グリム童話」を読み込みながら、ユング心理学による分析で解説しています。この2冊を読むと、多くの作家の作品が神話・説話・昔話・童話を何らかの形で影響を受けているのではないかと思われます。

     『昔話と日本人の心』の「あとがき」で以下のように語っています。

    昭和52年に『昔話の深層』を出版すると予想外大きい反響があった。この本は昔話に対するユング派の考えを紹介、解説することを目的として書いたので、わが国でよく知られているグリム童話を取り上げ、それを素材として説明をこころみたものである。したがって、その「あとがき」にも記しておいたとおり、自ら日本人として日本の昔話を分析することを是非やってみたいし、やらなければならないと感じていた。

     日本の昔話について全体として筋の通った見方をすることは、最初のうちはほとんど不可能なことのように思えた。何度も何度も昔話を読んでいるうちに本書に示すように「女性像」に注目することによって筆者なりに筋を通すことができた。もちろんこれはひとつの筋であり、また異なった観点から異なった筋道を見出すことも可能であろう。

     

     『猫だましい』で河合隼雄が取り上げた作品は、神話・小説・昔話・童話、そして内外の作品と、猫を主題として取り上げているという以外はまさに多様であります。猫好きではない私でも、ここで取り上げユング心理学による解説・分析を読んでいると興味が湧いてその作品自体を読んでみたくなります。著者も本のなかでこのよう書いています。

     ある程度は筋を紹介しながら、自分の考えを述べていくより仕方がないのだが、これもあまりやり過ぎると、読者もその原作を読み直そうとする興味を失ってしまうかもしれない。そもそも、このような文章を書いて、一番嬉しいのは、これを読んだので、原作が読みたくなって読んだ、といわれることである。

    この本で取り上げた作品をここで紹介します。

     ホフマン『牡猫ムルの人生観』、ペロー『長靴をはいた猫』、ル=グウイン『空飛び猫』、『日本の昔話のなかの猫』、『宮沢健治の作品に出てくる猫』、『怪猫=鍋島猫騒動』、佐野洋子『百万回生きたねこ』、ワンダ・ガアグ『100まんびきのねこ』、ポール・ギャリコ『トマシーナ』、谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』、少女マンガの猫として大島弓子『綿の国星』、コレット『牝猫』

     

    以下に、『猫だましい』の第1章「なぜ猫なのか」から引用します。

     犬よりは猫の方が、「たましいの不可解さ」、とらえどころのなさをはるかに感じさせるように思われる。

     この科学技術の発展した時代にどうして「たましい」などということを話したがるのかについて、初めに少し触れておきたい。私は心理療法家という仕事をしていて、多くの人の悩みの相談を受けながら、それらの悩みに共通する問題があるように感じていた。それを私なりの言葉で表現すると、「関係性の喪失」ということになる。関係といわず、わざわざ関係性と言うのは、親子関係、師弟関係、医者・患者関係などと「関係」という言葉によって表されながら、そこにほんとうに感じられる感じられる関係として実感されることを示したいと思うからである。

     近代はものごとを割り切って考えることによって、ずいぶんと生活の便利さを獲得するようになった。しかし、その分だけ「関係性の喪失」に悩まなければならなくなった。あらゆるところで、人間関係の希薄化を嘆く声が聞こえてくる。それはすなわち、「たましいの喪失」である。

     猫を「たましいの顕現」と呼びたいほどに感じる時もある。「たましい」はそれ自体取り出すことはできない。しかし、そのはたらきはいろいろと人間の五官に感じられる存在として示される。猫はそれらのなかでも、相当に「たましい」に関連付けられやすい生き物なのである。

    shr-horiuchi * こんな本を読みました * 21:01 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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