<< May 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 司馬遼太郎著『アメリカ素描』 | main | エマニュエル・トッド『文明の接近』、ハチントン『文明の衝突』、ロストウ『経済成長の諸段階』 >>

遠藤周作著『沈黙』・『死海のほとり』ほか

0

    遠藤周作著

     『沈黙』(新潮社 昭和41年)、『死海のほとり』(新潮社 昭和48年)

     『銃と十字架』(中央公論社 昭和54年)、『侍』(新潮社 1980年)

     『イエスの生涯』・『キリストの誕生』(新潮文庫)

     『私にとって神とは』(光文社 1983年)

     

     遠藤周作原作の『沈黙』が日米合作で映画化され、日本でも1月に上映されることになりました。遠藤文学の最高傑作とも言わ『沈黙』は出版当時大変話題となり、各国語に翻訳され大きな評価を受けてきました。ノーベル文学賞の候補にもなったようですが、遠藤周作の理解するイエス像・キリスト像がキリスト教の伝えるイエス・キリスト像とかけ離れていて受賞には至らなかったとも言われています。

     以下は『私にとって神とは』の後書きからの引用です。

     私のような男がまがりなりにも宗教を信じているので、今日までいろいろの質問を受けてきた。「いったい神なんか本気で信じているのか」とか「あんたにとって神とは何か」とかなどである。そういう数々の質問を私が整理して、それに私なりの考えを、できるだけわかりやすく話して、それを文章にしたのが、この本である。振り返ってみると、私の信仰はお読みになるとわかるだろうが、何よりも「無理をしない」「きばらない」ことの上に成り立っているようである。恥ずかしいことだが仕方がない。

     ■この文章は遠藤周作流のてれかくしであり、上記のどの作品を読んでも、まじめに真摯にイエス像・キリスト像、そしてキリスト教に取り組んでいることがよく理解できます。

     遠藤周作のイエス像・キリスト像は『死海のほとり』で悩み求めている姿がありますが、それが『イエスの生涯』『キリストの誕生』に繋がっていると思います。そして遠藤周作の解釈が日本人にとって、とても理解しやすい納得できるイエス像でもあるようです。

     以下は『イエスの生涯』からの引用です。

     イエスもまた、民衆のうつろいやすい真理を見抜いておられた。この半年の間、人々から取り囲まれ、村から村、町から町でイエスはは悦びの声で迎えられたときから、彼はいつの日か、これらの人たちが自分を棄てることを予感されていた。

     愛の神、神の愛、それを語るのはやさしい。しかしそれを現実のに証しすることは最も困難なことである。なぜなら「愛」は多くの場合、現実には無力だったからだ。現実には直接に役にたたぬからだ。現実は神の不在か、神の沈黙か、神の怒りを暗示するだけで、そのどこに「愛」が隠れているのか、我々を途方に暮れさせるだけだからだ。

     イエスは民衆が、結局は現実に役に立つものだけを求めているのを身に染みて感じねばならなかった。かれは愛の神と神の愛だけを説いたのに、彼らは「愛」ではなく、現実的なものしか彼に求めてこなかった。盲人たちは目の開くことを、跛は足の動くことだけを、癩者は膿の出る傷口のふさぐことだけを要求してくるのだった。

     彼は癩者を元の体に戻してやりたかった。盲人の眼も見えるようにしてやりたかった。跛も歩かせてやりたかった。子を失った母に、その子を戻してやりたかった。しかしそれができなかったとき、彼の眼には悲しみの色が浮かんだ。彼は彼らの苦痛やみじめさを引き受けたいとひたすら願った。彼らの苦しみを分かち合うこと、彼らの連帯者となることはイエスの願いであった。しかし彼らは治してくれとイエスに訴えてくる。

    「彼らは徴(しるし)と奇跡を見ざれば信ぜず」

     

     イエスは永遠に人間の同伴者となるため、愛の神の存在証明をするために自分が最も惨めな形で死なねばならなかった。人間の味わうすべての悲しみと苦しみを味わわねばならなかった。もしそうでなければ、イエスは人間の悲しみや苦しみ分かち合うことができぬからである。人間に向かって、ごらん、私がそばにいる、私もあなたと同じように、いや、あなた以上に苦しんだのだ、と言えぬからである。人間に向かって、あなたの苦しみはよくわかる、なぜなら私もそれを味わったからと言えぬからである。

    shr-horiuchi * こんな本を読みました * 21:18 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

    コメント

    コメントする









    トラックバック

    このページの先頭へ