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ヘレン・ミアーズ著『アメリカの鏡・日本』その2

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    『アメリカの鏡・日本』(メディアファクトリー 1995年7月3日)

    訳者:伊藤延司

     

    以下『アメリカの鏡・日本』からの引用です。パールハーバーに至るまで両国民の意識が、いかに政治に操られていたか、現在に通じるものがあります。

     

     日本では、私が二度目に滞在した1935年、ヒステリー症状が異常に高ぶっていた。症状は、ごく軽いものから、恐ろしく激しいもの、さまざまだったが、みんな破滅に向かって吹きすさぶ台風の中の藁のように一様になびいていた。ラジオや新聞にあふれるプロパガンダに、その症状はよく表われていた。

     日本の指導部は国際連盟についてこういうのだった。国際連盟は、白人が力で奪いとった世界を支配し、アジア・太平洋の島々を搾取し続けるためのクラブである。ムッソリーニの軍隊がエチオピアを爆撃しても、連盟は何もしなかったではないか。にもかかわらず、満州の秩序と平和を維持するために、合法的に最善を尽くしているわが国には干渉し、われわれを非難している。

     1935年当時、日本に滞在していた私には、こういう非難と歪曲はあまりにも馬鹿げていた。だから、日本国民がこんな話をまともに受け止めているのが理解できなかった。しかし、日本人と政治の話をしていると、彼らがプロパガンダを心から信じていることが分かった。しかも、私が話したすべての人が同じ考えを持っていることを知って愕然とした。日本人の頭に詰まっているのは脳ではなくて、同じレコードを繰り返す蓄音機だった。

     日本の指導部は本気で満州と華北を侵略するつもりなのだ。根拠のない非難と、事実を捻じ曲げたプロパガンダで国民を脅かし、ついてこさせようとしているのだ。私はごく自然にそう思った。日本人は実に影響されやすい民族で、指導層が決めたことなら何でも黙って従うが、アメリカ国民は違う。その時はそう思っていたのだ。

     ところが、アメリカに戻り1938年からパールハーバーに至るアメリカの危機の日々と、その後の推移の中で、自分の国もまた同じ道を辿っていることを知ったのである。大統領が1939年に「制限的非常事態」を、ついで1941年5月28日には「無制限非常事態」を宣言した。国民はラジオ、新聞、演説にあおられ、パニック状態に陥っていった。乱暴に捻じ曲げられた歴史記述が、当然の事実として受け入れられた。

     米国民はこうした警告を当然の事実として受け入れていた。それは日本での体験から、十分うかがえたのだ。友人や隣近所の人と国際問題を議論したり、あるいは新聞を読んだりする中で、アメリカ人も日本人と同様、頭の中に持っているのは脳味噌ではなくて蓄音機であることを知って驚いた。アメリカの蓄音器がかけているのは日本とは違うレコードだが、それでも信じられないほど多くのアメリカ人が、同じテーマのレコードを聴いていた。

     

     パールハーバーはアメリカ合衆国の征服を企んで仕掛けられた「一方的攻撃」であるというが、この論理では日本を公正に罰することはできない。なぜなら、私たちの公式記録が、パールハーバーはアメリカが日本に仕掛けた経済戦争への反撃だったという事実を明らかにしているからだ。パールハーバーは青天の霹靂ではなく、然るべき原因があって起きたのだ。原因は、1941年7月25日にアメリカ、イギリス、オランダが打ち出した「凍結令」である。三国は自国領内にある日本の全資産を凍結し、貿易、金融機関をすべて断絶した。日本は輸入必需品の80%を凍結地域に頼っていたから、三国の行動は日中戦争の泥沼化だけではなく、国内経済の窒息を意味するものだった。

     日本はアメリカに特使を送り、こうした厳しい措置の緩和を要請した。しかし、日本からは、アメリカは両国間の対立を解決する意思をもっておらず、戦争は不可避と考えているように見えた。会談の公式記録を読んでみると、アメリカは日本がそう疑うだけの根拠を与えている。だから、アメリカはヨーロッパの戦争がある程度めどが立ち、自国の防衛計画を整備するまでの時間稼ぎをしている、と日本が思ったのは当然である。

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