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E・H・カー著『危機の二十年』その2

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    E・H・カー著『危機の二十年』(岩波文庫)

     

     南シナ海における中国の主張や行動は国際海洋法条約違反だとしてフィリピンが求めていた仲裁手続きにおいて、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は7月12日に、中国が南シナ海に歴史的根拠があるとして独自に認定していた九段線には法的根拠はないとする裁定を公表しました。これは中国の強引な海洋進出に対する初の国際的な司法判断です。これに対して中国は「政治的な茶番劇で判決文は紙くず同様だ」と反発し、品のない発言を繰り返しながら、むしろより一層強硬な行動を取っているようです。

     中国には、おそらく党と軍との指導権争い、共産党内部の争い、経済的な行き詰まり、などなど中国の国内問題があり国民の目を外に向けざるを得ないような事情もあるのでしょう。また、日本に対してはますます、ないことないこと日本の悪口を世界に公言し、特に東南アジアへの日本の影響力を弱める方針を強くしていくと思われます。中国は、軍事力・経済力・意見を支配する力を発揮して行くことでしょう。

     むしろここまで強行に出られる要因として、欧米先進国の事情があるようにも思えます。アメリカは大統領選挙で目が国内に向かっていること、イギリス・フランス・ドイツなどは、その精神であり・心であり・魂でもある民主主義・自由主義・報道の自由・国民の権利という理念を、対中国に関しては圧倒的な中国のマネーの前にその魂を売り渡してしまい、遠いアジアでの中国の横暴には金欲しさに目を瞑って批判的な言動は取らないと中国は判断しているのでしょう。もっとも、ヨーロッパ自身がテロ、難民、経済と問題山積みで他所ごとに構っていられないというのが実情でしょう。これでは第二次世界大戦前のナチス・ヒトラーに対する融和政策や、日本の満州事変や日華事変に対する黙認と同じ轍を踏むことになりそうです。

    歴史に学ばなければ、つねに「後悔先に立たず」です。

    以下『危機の二十年』からの引用です。

     

     国際分野における政治権力は、軍事力・経済力・意見を支配する力の3つのカテゴリーの分類される。そしてこれらのカテゴリーは密接に絡み合っている。つまりそれらは理論的には分離できても、国家があるカテゴリーの権力を他のカテゴリーの権力から切り離して保有するのは、現実には考えられないことである。権力は、その本質において不可分の一体である。

     軍事的手段が最高度に重要であるのはなぜか。その理由は、国際政治における権力の最後の手段が戦争である、という事実にある。国家のあらゆる行動は、その権力の側面からすれば戦争に向けられている。クラウゼヴィッツの「戦争は他の手段による政治的関係の継続にほかならない」という有名な警句がる。

    領土問題は経済的理由からというよりも、むしろ軍事的な理由によるものである。権力の行使が常に更なる権力欲を生むように見えるのは多分このためである。ニーバー博士が述べているように、「生存への意志と、権力への意志との間に、明確に一線を引くことは不可能」である。国家の団結・独立という形でその最初の目的を達成したナショナリズムは、殆ど自動的に帝国主義へと向かっていく。「人間というものは、既に持っているものに加えて、さらに新しいものが獲得できるという保証があるときでないと、ものを持っているという安心感にひたれない」というマキャベリの警句は、国際政治の現実によって十分に証明されている。そして、人間は「彼が現在持っている、よく生きるための力と手段を確保しうるためには、それ以上を獲得しなければならない」というホッブスの警句もまた、同じである。安全保障という目的のために始められた戦争は、たちまち攻撃的、利己主義的になるのである。

     

     経済の力は、つねに政治権力の手段となってきた。ただ、第一には、それが軍事的手段と結びつくならばということである。

    国家政策の一手段としての経済的武器を使うその第二のの使い方、即ち権力を獲得し国外に影響力を及ぼすためにこの経済的武器を用いる時には、この経済的武器は、次のような主として二つの形を取る。a資本の輸出、b海外市場の支配。

     軍事力と経済力というこの分野において引き出される最も重要な教訓は、経済力と軍事力の一般的な区別が人々を惑わす性格を持つものだ、ということである。あらゆる政治行動の構成要素である権力は、不可分一体である。権力は同じ目的のために軍事的武器と経済的武器を用いる。

     

     意見を支配する力に関しては、支配階級ないしは支配国家、あるいは強力な国家群はその特権的な立場の保持に有利な意見を展開するばかりでなく、その軍事的・経済的優位の力を駆って容易に自らの意見を他者に押し付けることができるからである。

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